国家の品格:著者 藤原正彦

国家の品格 藤原正彦

話題の本、「国家の品格」を読んでみる。巷では内容に賛否両論あるようだが、それもそのはず。読んだ自分の中でさえも賛成vs反対の葛藤がある。それを、あえてワンフレーズで感想をいえば、
国家の品格」は「品格のある個人」から

かつての武士は「国家」に忠誠を誓ったのではなく、個としての尊厳をもって「主君」に忠誠を誓ったのだとすれば、個としてキラリと光る人材の集合体として、日本という国家が光っていたのが江戸時代末期から明治にかけての時代だったのだろう。明治期は、数百年かけて日本の中に蓄積した「武士道エネルギー」が一気に放出され、消費された時代だった。そういう意味では、明治は偉大な時代だったかもしれないが、エネルギーを消費するのみで、後に残す努力を怠ったならば、たとえ明治の偉人であっても賞賛するばかりではいられない。
武士という支配層が消滅し、表面上の平等ならば得られた現代では、品格を持ち、他階層からの模範となる人々もまた静かに消えていってしまった。武士の魂は失われ、型のみが残った。魂を持つ支配層の無き日本で、自分は何をなすべきなのか。愚痴を言ってばかりもいられまい。「品格のある個人」を目指して精進しようと思う。

ところで、本文中にでてくる質問、ドキッとするものがある。

  • 40ページ

夏目漱石の『こころ』の中の先生の自殺と、三島由紀夫の自殺とは何か関係があるのか」

  • 41ページ

縄文式土器弥生式土器はどう違うんだ」

元寇というのは二度あった。最初のと後のとでは、何がどう違ったんだ?」

こういう質問で話題がはずまないようなら、世界のトップエリートにはなれないらしい。前途は険しい。


国家の品格 目次

  • はじめに :3
  • 第1章 近代的合理精神の限界 :11
    • すべての先進国で社会の荒廃が進行している。その原因は、近代のあらゆるイデオロギーの根幹を成す「近代的合理精神」が限界にぶつかったことにある。
  • 第2章 「論理」だけでは世界が破綻する :35
    • 「論理を徹底すれば問題が解決できる」という考え方は誤りである。帝国主義でも共産主義でも資本主義でも例外はない。「美しい論理」に内在する四つの欠陥を指摘する。
  • 第3章 自由、平等、民主主義を疑う :65
    • 自由と平等の概念は欧米が作り上げた「フィクション」である。民主主義の前提条件、「成熟した国民」は永遠に存在しない。欧米社会の前提を根底から問う。
  • 第4章 「情緒」と「形」の国、日本:95
    • 自然への感受性、もののあわれ、懐かしさ、惻隠の情……。論理偏重の欧米型文明に代わりうる、「情緒」や形を重んじた日本型文明の可能性。
  • 第5章 「武士道精神」の復活を:116
    • 鎌倉武士の「戦いの掟」だった武士道は、日本人の道徳の中核をなす「武士道精神」へと洗練されてきた。新渡戸稲造の『武士道』を繙きながら、その今日性を論じる。
  • 第6章 なぜ「情緒と形」が大事なのか:130
    • 「情緒と形」の文明は、日本に限定すべきものではない。そこには世界に通用する普遍性がある。六つの理由を挙げて説く、「情緒と形」の大切さ。
  • 第7章 国家の品格:158
    • 日本が目指すべきは「普通の国」ではない。他のどことも徹底的に違う「異常な国」だ――。「天才を生む国家」の条件、「品格ある国家」の指標とは。

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藤原 正彦

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